2009年4月、当社技術者の佐野雄一がドイツ・シュパイヒンゲンにあるザウター本社へ技術研修に行って参りました。その研修旅行のレポートです。(文章・写真/佐野雄一)
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1日目 ドイツへ到着
2日目 シュパイヒンゲンでの自由行動
この日は日曜日なので工場はお休み。シュパイヒンゲンで自由行動です。教会の鐘の音、鳥の鳴き声、朝食のパンの香りで目が覚めました。
「ああ、ここはドイツなのかぁ。」と思いつつ、朝食を食べに1階のレストランへ。いろいろなパンがある中、左の写真が毎日の朝食で食べることになるゼンメルという定番のパン。横からナイフを入れて上下に2つにスライスし、バターやジャムを塗ったり、ハムやチーズを挟んで食べていました噛みごたえがあります!
朝は「Morgen!(モルゲン)=おはよう」と言ってレストランに入り、出る時は「Tschuess!(チュース)=またね」と言うドイツの習慣を実感しました。
部屋から撮った風景、朝食前と朝食後でこの違いです!
おかげさまで帰りの日まで快晴でした。
8日間宿泊したホテル・クロイツとホテルから見た街並み
教会前の噴水と街のシンボルとも言える教会
日曜の10時からはミサをしていたので中に入らせてもらい、荘厳な雰囲気の中で聴くオルガンの音はとても感動的でした。
趣のあるシュパイヒンゲンの駅舎と一両編成で停まる普通列車
よく見かけたドイツの自動販売機
朝と晩は冷え込みますが日中はポカポカでした。話によると、到着の前の週までは雪が残っていたらしいので、良いタイミングでした。町を歩いていると少なくとも3つの教会があり、日曜でも人が少なく信号は2箇所しか見かけなかった気がします。鐘の音と鳥のさえずりが印象的で、贅沢なゆったりとした時間が流れていました。そして、日曜でも開いている店を探して店外で昼食です。
お気に入りのドイツ風カツレツの「シュニッツェル」と、こっちの大きなパンも美味しそうでした。
丘に上って撮影、右の写真の下に見える白い建物がザウターの工場
家を見ているだけでも面白く、どれもカワイイ家があるのが印象的です。
公園ではバスケットやローラーブレードをする子どもたち、サイクリングをする家族連れ、散歩をするご夫婦。すべてがゆったりと流れていて、これがドイツの休日の過ごし方なんだなぁと思いました。
喉が渇いたら、ガソリンスタンドの売店がコンビニ代わりで、そこでも「ハロー」と「チュース」を言うのはドイツを感じる点です。
夕食はホテル・クロイツのレストランでザウターさんと一緒に、ドイツで野菜の王様と言われる定番のホワイトアスバラガスを食べました。大きくても柔らかく、美味しくてヘルシーでした。
その場でザウターに使われている弦について質問をしました。やはり現場で聞くのが一番正確な情報です。
「真線はレスローを使っています。ピターンは錆びるので現在は使っていません。巻線は銅線にデーゲンを使い、グランドピアノのオメガとフルコンのみ別注でヘラーに製作を依頼しています。」とのことでした。
※レスローやデーゲンはいずれもドイツを代表するピアノの弦を専門に製造しているメーカーです。スタインウェイやベヒシュタイン等の一流ピアノメーカーでも使われています。
3日目 工場研修1日目
いよいよ工場研修です。行き帰りは行員の方にホテルから工場まで送迎していただきました。
まず初日の午前中は工場見学からです。
工場の玄関とショールーム。まずはここでザウターのピアノを試弾します。第一印象は「美しい音色!」というのも日本で聴くよりも更に美しいのです。根本的にドイツと日本の気候の違いによる音の抜けの違いが理由の一つだと思いますが、改めてザウターのピアノの魅力を知らされました。
工場内は基本的に撮影禁止ですが、今回は特別に工場長のヤンチュさんのご厚意で撮影を許可してもらいました!
美しい木材がたくさん整理されて置かれています。
近代的な機械もあります。
巻線(低音弦)も工場内で造られています。後日写真のおじさんに巻線についていろいろお聞きしました。
ここでは木工の作業が行われます。
治具が多いのもザウターの工場の特徴です。
マホガニー、カエデ、ブナの合板でグランドピアノの側板を造っています。
グランドピアノの大屋根は無垢の木を重ねたロートホルツという軽い物を使用しています。
ドイツでは張弦も素手でやります。日本人は軍手をつけてすることが多いです。
張弦後はローラーで弦をのばし、日本のように自動打鍵機は使いません。
塗装、そして磨きです。
ここからは「クラヴィーア・バウ」という僕ら調律師の出番の分野です。
アクションにハンマーを取付、接着し、固定しています。
アップライトピアノのアクションがたくさんあります。
グランドピアノの第一整調では側板もまだ取付前で、鍵盤鉛調整もその後にします。
アップライトピアノも美しい。
午後からは日本との音の違いを感じつつ、写真のグランドピアノ(オメガ)の調律とアップライトピアノの整調をしました。
二階に工場があるので、その作業の音も聞こえつつ、一階のショールームで調律をすると「あぁ、ここは工場なんだなぁ。」と実感が湧きますし、周りにドイツ人の行員がいるなか二階のボックスでアップライトピアノの整調をすると独特の緊張感があります。
送り迎えの都合があるので30分早く4時に作業終了となり、あっという間の一日でした。
ホテルまで送ってもらい、「Bis Morgen!(ビス・モルゲン)=また明日!」と挨拶した後は「さぁ、夕食までこれから何をしよう?」となります。
まずは初めてドイツのスーパーへ行ってみました。
ドイツのあちこちにあるREWE(レーヴェ)というスーパー。日曜日は案の定営業していませんでしたが、平日は10時まで営業しているので結構楽しめます。
日本の出前一丁は世界中に出前に行くみたいです(笑)
色の違いは青は海鮮味、赤はラー油味、緑は鶏がら味らしいです!
そしてドイツで有名なお菓子、クマさんの形をしたグミで「ハリボ」と言います。
他に、日本より大きい歯ブラシも印象的でした。
レジではベルトコンベヤーの上にみんな商品を置き、前の人と分けるために仕切りを置いたり、見様見真似で買い物をしました。袋がもらえないのも注意です!
とにかくビールとハムとチーズは安いのですが、ユーロ高の関係もあり、全体的に日本より高い印象でした。
4日目 工場研修2日目
この日から4日間、朝食のパンのバリエーションが少なくなり、噛み応えのあるゼンメルの毎日が始まります。でも朝食はまだ卵、ハム、ヨーグルトにシリアルと選べるので良いのですが、工場で5日間毎日同じだった昼食のハムとチーズを挟んだ固くて大きなパンにはみんな悲鳴をあげていました。(笑笑)
一方、工場の作業はこの日からショールームのグランドピアノ(デルタ)の第2整調を始めました。
常にお客様のピアノを調整している我々が思うピアノの対処の仕方と違う、工場ならではの手順ややり方、まだ新しくて安定していないピアノの調整、その後の変化の見越し方。等々、発見や収穫のある実習をさせていただきました。
すべては現地でお世話いただいた工場で働かれている日本人の高橋さんのご協力のおかげです。改めて高橋さんにお礼を申し上げたいです。
まずは鍵盤の動きを棒ヤスリを使って支点の穴を調整していきます。
他のピアノメーカーに比べ、柔らかいトウヒを多く使用しているザウターの特徴をふまえて、鍵盤を支え固定しているオサをまず手が触れる力点側をカンナやペーパーヤスリでピッタリと調整し、奧の支点側の調整も合わせます。
ザウターの鍵盤比率の特徴を教えていただき、鍵盤の高さを一様に揃える上で支点のピンの左右前後の傾きを変えることによる鍵盤重量の変化は注意せねばなりません。
高橋さんにチェックしてもらいながら、工場の道具や方法で行う作業は新鮮でもあり基本に忠実でした。高橋さん自身、「ザウターは変わった調整のやり方はしません。基本的な作業をします。」とおっしゃっていました。このような作業をみるだけでも、ザウターが自信を持ってお客様にご提供できるピアノだと改めて感じました。
この日は夕食後に高橋さんと奥さんに誘われて、みんなでビリヤードに行きました。そこにはビリヤード仲間の元ザウター行員のロージーさんも加わってビールを飲みながら楽しみました。
上列の左から高橋さん、元行員のロージーさん、山中さん、金子さん、酒井さん。下列の左から高橋さんの奥さん、中村さん、佐野
その最中、ロージーさんの旦那さんが来られました。どこかで見たようなと思っていたら、初日の工場見学で見た巻線(低音弦)を作っていた方でした!
中村さんとドイツ語で巻線についてお聞きしていると、僕らがドイツ語がわかるまで何度も説明してくれました。その内容は・・・
・巻線作りの手巻きと機械巻きでは、むしろ機械巻きの方が同じ力で巻けるからベター。
・ザウターは他のドイツメーカーが左巻きに対して、唯一昔から右巻きで巻き線を作っている。
最後にお別れの時はギュッと握手をしてくれました。短い期間にこのような交流が出来たこともとても貴重な体験でした。
5日目 工場研修3日目
この日も昨日の続きです。工場での整調は大きく寸法を変えることになるので、現場で作業をしている我々とは手順が異なります。
また、一つ一つの工程に設計寸法の特徴を考え、その後の変化を見越して丁寧に行います。
参考までに工場出荷時の主な寸法をご紹介します。
・鍵盤の深さは10.1mm
・ハンマーの打現距離は44mm
また整調の次の作業である整音を正確にするため、倍音を多く含むようにレットオフという鍵盤の力をどれだけハンマーに伝達するか左右する調整を非常に切りつめていたのが印象的でした。(これも工場ならではの考えで、年に一度だけお伺いする我々は、その後の一年間の変化を見越して調整するため、そこまでは切りつめません。)
何度も見直し、高橋さんにチェックしてもらいつつザウターの特徴を教えていただきました。
その後食べる昼食のパンは慣れませんが、この頃になるとミネラルウォーターは炭酸入りでないと物足りなくなりました!
それと、今まで聞き取れなかった工場内の独特のお昼の挨拶の謎がやっと解けました。
「Mal Zeit.(マール・ツァイト)」とすれ違うときなど挨拶していたようです。それからも僕もお昼は「マール・ツァイト」と挨拶するようにしていました。
作業後はドイツの美味しいアイスクリームを食べに行きました。
左の暖かいベリーソースを右の生クリームののったアイスにかけます。
ドイツの生クリームはあまり甘くないので、量が多くても平気です。「おいしかった!」
レストランやカフェで何かを食べたときは、気持ちで1ユーロくらいチップを上げます。
ホテルではチップは必要ありませんでしたが、食事の支払い時はサービス料としてチップを上げるのが一般のようです。これだけでも対応が変わります。
宿泊中、夕食は毎日ホテルのレストランで食べましたが、ここの食事も美味しいのでとても満足でした。
テーブルの上には「reserviert=予約席」と書かれており、それも嬉しい配慮でした。
ドイツといえばビール!日本では発泡酒や第3のビールのように種類によって値段が違いますが、ドイツではそのようなことはなく、地方地方で様々な地ビールが味わえます。
まず、よく飲んだビールは日本と同じ「Pils(ピルス)」と呼ばれるビール。それと小麦を原料とした「Weizan(ヴァイツェン)」、酵母入りの「Hefeweizen(ヘーフェヴァイツェン)」いずれも美味しくてまさにビール天国です!
料理もせっかくなのでドイツならではのものを選んで食べました。
ドイツ風カツレツの「Schnitzel(シュニッツェル)」、ドイツ風ニョッキの「Spaetzle(シュペッツレ)」、ドイツ風ラヴィオリ・スープの「Maultaschensuppe(マオルタッシェン・ズッペ)」etc・・・
ほかにも白身魚のフライや、ドイツはジャガイモがおいしいのでフライドポテトもおいしかったです。
ただ、どれも量が多いことと塩味が強いのが特徴でした。
ウェイトレスの方は気を使って「お口にあいましたか?おいしいですか?」と聞いてくれます。
こうした心遣いもうれしいものです。
なんといっても、ここの食後のコーヒーが今でも忘れられません。本当においしくていつも一人で「Einmal kaffe,bitte!=コーヒーを1杯ください!」と注文していました。
6日目 工場研修4日目
毎日、工場ならではのアクションを組み立てる段階や設計寸法のお話しを聴きながらする整調作業は得がたい経験でした。新しいピアノは整調が安定しておらず変化しやすいのはわかっていても、ザウターの工場では精度を求めてきちんと作業をしています。また工員によって作業のやり方がそれぞれだという事も日本のピアノ工場ではありません。
一つ興味深かった作業で「弦合わせ」という作業があります。一般的には1音に2本または3本ある弦に対してハンマー側を削って同時に接するように調整しますが、ザウターの工場では弦側の高さを変えてハンマーと同時に接するように調整します。
いずれも音に芯が出る等の表現力が増す大切な作業です。ザウターではまだ安定していない弦を重視して、その様に作業しているようです。
工場の窓から黄色いお花が咲いているのが見えます。「この花が咲くと”あぁ、春が来たんだなぁ。”と思うんです」と高橋さんが話してくれました。
この日の午後は2時間、工場長で木工のマイスターであるヤンチュさんへ質問の時間をとっていただきました。またその間にブログでも紹介した新聞の取材がありました!詳細はブログで・・・。
ここではヤンチュさんへの質問と回答を紹介します。
Q ザウターのセールスポイントを教えて下さい。
A ・他のドイツメーカーに比べて響板面積が大きく、響棒と駒を同時に接着して更に響板にクラウンを付ける独特のプレス方法。有能で長く勤めている人を使って自社で製作しています。
・化粧板などの外装の木材選定を厳しくしています。
・ハンマーは「アーベル」、鍵盤は「クルーゲ」など部品を専門に製作している一流のメーカーのものを使用しています。
・デザイナー「ペーター・マリー」に依頼したインテリア・ピアノがあり、アジア向けモデルなど製造に柔軟性があります。
・性能の高い機械だけでなく、人も優秀でないといけないというのが信条です。
Q 響板はどこのものを使用していますか?
A 響板は一部のモデルは北イタリアの「シレサ」というメーカーのトウヒを使い、ほとんどのモデルはドイツ・スイス・オーストリアの国境に接しているボーデン湖の近くのBregenzerwald(ブレーゲンツァーヴァルト)という森のトウヒを使っています。
また伐採は満月後の月が欠けるときに行います。湖の満ち引きと同じで、その時は根っこに水が落ちているので乾燥させやすいのです。(月が欠けるときに切るということは聞いたことがありましたが、そんな理由があったとは初めて知りました!)
厚さは中心が9mmで外に向かうにしたがって2mm薄くなります。
Q 駒についておしえてください。
A アップライトピアノはブナの積層材を使い、グランドピアノはカエデの無垢材を使っています。更に駒ピンは錆びないようにニッケル・メッキを使用します。フルコンサートピアノにはより振動伝達が良いチタンを使っています。
Q ハンマーの接着にはどんな接着剤を使っていますか?
A 白ボンドに硬化剤を加えたものを使っています。というのも、ハンマーの接着剤は音に大きく影響するので硬化剤を加えています。化学性の接着剤は管理がしやすいのと、数年後の変化の上で信頼性が高いので、ニカワは使っていません。
Q ザウターの今後のピアノ造りの方向性は?
A 価格のために木材の質を下げることはしません。購入後もし売る時にも損をしないように、質の高いピアノを造り、ザウターはドイツ国内でも評価が安定しています。
ピアノの音量追求のために、現行モデルをスタインウェイに近づけることはありません。毎年ザウターの音創りは、お客様の反応に合わせて会議で決めています。
他にもたくさんの質問に答えていただき、ありがとうございました!
7日目 工場研修最終日
まず、朝一番で昨日の取材の新聞をスーパーに買いに行きました。工場に着くとヤンチュさんも「新聞の記事読みましたよ!」と笑顔で迎えてくれました。そして、工場の裏にはピアノ運送屋さんのトラックが停まっていました。
名残惜しくもこの日が研修最後の日です。そして噛み応えのあるお昼のパンともお別れです。食堂のドアには工場の休憩時間が書かれています。
昨日で整調作業が終わり、ハンマー弦合わせ後に第一整音(針刺し)をさせてもらいました。
ハンマーに針を刺すゾーンを決めて、どのくらい深く刺すかを考え、芯をどう残すか?を決めます。下刺しも高橋さんはハンマーの肩から上へ叩き刺しで、マイスターのカオフマンさんはハンマーの腹から上へ押し刺しとやり方が違います。
いずれにしても、下刺しに1時間、その後一鍵一鍵を3~4時間かけて揃えます。ザウターの音域ごとの音色の特徴を教えていただき、それを知った上で整音作業をすることはとても有意義でした。また、硬化剤は様子を見て、最高音域か最低音域のハンマーの先端に数滴しか使っていないこともザウターの特徴です。
その後、ファイリング→弦合わせ→調律→仕上げの整音と作業が続きます。
この日はザウターが工場でどのように仕上がるか?ただ音量を追求した音創りでないと確認でき、改めてザウターのピアノ造りの丁寧さや音の魅力を感じました。
金曜日はお昼で工場が閉まるので午後は自由時間となります。日曜日はお店が基本お休みとなるので、これからお土産を買うのも含め、高橋さんご夫婦に大学の町フライブルクへ連れて行ってもらいました。
緊張していた研修期間から切り替えて、これからはドイツを満喫します。
初めてアウトバーンに乗って、周りに草原を眺めながらの移動は疲れも吹き飛びました。
フライブルクはシュパイヒンゲンの田舎町と違い、まるでディズニーランドのようなメルヘンチックな都会で、また新たなドイツの一面に出会いました。
デパートもあり、路面電車も走っていて、その横を水路がながれています!
人もたくさん歩いています。
家がとてもカワイイです。
町の裏側には小川が流れています。
おじさんが白いピアノを弾いていました。これがとてもイイ音で街の雰囲気と合ってイイ気分でいると、その時自由行動で一人で歩いていましたが、案の定、右の写真あたりで道に迷いました(笑)
何とかみんなと合流し、大聖堂へ向かいます。
大聖堂の中はステンドグラスにパイプオルガンがあり、
大聖堂を出て、その後はビールの醸造所直営のビヤホールへ行きました。
その道中、ふとショー・ウィンドウを眺めているとシュタイフのテディベアがありました。真ん中の白いテデヒベア、値段を見るとなんと110ユーロ(約1万4300円)!ひと際やはり輝いていました!
マルティンズ・ブロイ、ここで初めて黒ビールを飲みました。コクがあって美味しかったです。そして意外とドイツで見かけたフジがこのお店の前にも咲いていました。
8日目 ザウター社長との観光
現在ザウターでは3人の日本人が勤めています。この日の朝は、高橋さん以外のお二人にホテルまで来ていただき朝食をご一緒して、その後朝市に行きました。魚屋さんやパン屋さん等、このような移動出店などが来て賑わってました。
昨日ザウターさんが「Halb Zehn.(ハルプ・ツェーン)=10時30分前」と言ってくださった通り、9時半にベンツのステーションワゴンで迎えに来てくれました。高橋さんご夫婦と合流し、今日の一番の目的地スイスとの国境にあるボーデン湖に向かいました。この時期は道路工事が多く、「Umleitung(ウムライトゥング)=迂回路」という標識を頼りに遠回りして行きます。
ボーデン湖の中には、島全体が自然公園のようになっている「マイナウ」という観光地があります。写真の奧に見える山々はもうスイスのアルプスです!
キジやアヒルも迎えてくれます。
ここではみんなカメラマンになります。
この時期は様々なチューリップが咲いていました。
お昼はここでカレーソーセージとポテトサラダにビール(ヴァイツェン)でほろ酔い気分になりました。
他にも蝶々ハウスや熱帯植物ハウスなどがあり、一日中過ごせるようになっています。
東京にも「夢の島」というのがありますが、ここはまさにドイツの「夢の島」でした。
その後はザウターさんの趣味の一つの射撃を体験させてもらいに、シュパイヒンゲンの隣町トゥットリンゲンに行きました。トゥットリンゲンには外科手術器具の製造工場があることで有名のようです。
少し高台にある射撃場。初めて撃つ実弾は「パンパン」と音が大きく、みんな耳栓をして一つ一つの操作を緊張してしました。きっと最初で最後になる貴重な体験をさせてもらいました。
そしてホテルに到着し、ザウターさん高橋さんご夫婦ともお別れです。ピアノのことのみならず、ドイツの文化や習慣を教えてもらいました。本当にお世話になりました!
9日目 フランクフルトでの自由行動
とうとうドイツ滞在の最後の日です。この日は早く朝食を済ませ、AM7時に工場長のヤンチュさんに迎えに来てもらい、初日と同じロットヴァイル駅まで送っていただきました。「この前はFreitag(フライターク)=金曜日にFreiburg(フライブルク)に行ったんですね(笑)」など話しつつ、電車が到着して「Gut Flug!(グート・フルーク)良いフライトを!」とドアが閉まるまで見送って下さいました。これにはみんな感謝しました。
また、シュトゥットガルトで乗り換えてICEでフランクフルトへ移動します。
とにかくこの日は日曜日でお店が基本的に開いてません。まずは町を散策しました。
メインストリートのカイザー通りも店がほとんど開いておらず、閑散としています。
すると欧州中央銀行が見えてきて、ビルの前には大きなユーロ・マークのオブジェがあります!
地図を片手に午前中は文豪ゲーテの生家「ゲーテ・ハウス」を見学しました。
家具や調度品は戦時中に疎開させてあったので、それらは当時の物が展示されています。
4階のこの部屋でゲーテの代表作「若きウェルテルの悩み」が書かれました!
ゲーテの父の部屋の書籍には法律関係の本などがぎっしりと詰まっており、ゲーテもここにある本で知識を広めたようです。
ここでは台所・居間・応接間など、18世紀半ばのドイツの上流階級市民の暮らしぶりを垣間見ることができます。ただ、数々の調度品の前に色々な言葉で「触らないで下さい。」と書いてある中、日本語でも書いてあるのが印象的でした。
昼食はレーマー広場にあったお店で黒ビールと白ソーセージとポテトサラダを、そばにあるニコライ教会の美しい鐘の音を聞きながら、本当に贅沢な時間を過ごしました。写真の左奧に見えるのは「カイザー・ドーム」とも呼ばれる大聖堂です。
その向かい側に旧市庁舎レーマーがあります。
マイン川の橋を渡り、川沿いをシュテーデル美術館に向かって歩きました。気候も良く、日々の仕事を忘れるようなひと時でした。
そして、素晴らしかったシュテーデル美術館。受付に行くと、案の定「Student?=学生さん?」と訊かれたので「Erwachsene(エアヴァクセネ)=大人です!」と応えました(笑)
カバンと上着を預けて、ドイツで多かったバーコードで入場券をチェックしてもらい、2時間少しかけて楽しみました。でも想像していたより広く、なんとフェルメールやボッティチェリーが一人貸切り状態で見られるんです!日本にフェルメールの絵画が来たら、人に揉まれながらかろうじて頭の隙間から見える程度なのに・・・じっくり見たい絵がたくさんあり時間が足りませんでしたが、そろそろ空港に向かわねばなりません。
ここで旅ならではのトラブルがありました!
フランクフルト中央駅から空港駅へ向かう電車を間違えてしまったのです!朝と違う駅に向かっていることに気付き、「この電車は空港に行きますか?」と聞くと、「Nein.(ナイン)=いいえ。」と言われてしまいました。すぐに次の駅で降りて、また中央駅に戻り今度は正しい電車に乗れたので、事なきを得ました。
日本のJRのようにドイツには「DB=ドイツ鉄道」というのがあり、ICEのような特急の他に、S-Bahn(エス・バーン)=近郊電車とU-Bahn(ウー・バーン)=地下鉄があります。更にSやUの後に数字があるのですが、それが路線番号だというのをその時は知らなかったので、本来はS8かS9に乗るところをS1に乗ってしまったのでした。これからドイツへ行かれる方はお気をつけ下さい!
10日目 帰国・総括
また半日を飛行機で過ごし成田へ到着すると、「ああ、現実の世界にもどったなぁ。」という思いでした。今回お世話になったグループのメンバーともここでお別れです。それぞれのかたのお仕事や経験談、更に言葉の面でもとても刺激になりました。改めてお礼を言いたいと思います。東京の実家に戻り、ブログでも紹介した新聞記事の翻訳を始めましたが、ここから数日は時差で夜に眠れない日々が続きます。
この取材をしてくれた記者の方に「日本はどういうイメージがありますか?」と逆に質問したところ、「日本は緑の国というイメージがあります。」と答えてくれました。
確かに岡山に戻ると、美しい緑をたくさん見ることができます。一番の違いは木の種類です。写真は岡山県真庭市の風景ですが、多くは杉の木なので花粉症の僕はドイツに行ったらピタっと治りました!
ザウターの高橋さんに「周りに見える森は何の木ですか?」と訊くと「トウヒです。」と教えてくれました。木の種類が違うから花粉症が治ったのかと納得して、その上この地方は響板にも使用されるトウヒがすぐ傍にあるのにも驚きでした。
日本のピアノメーカーは世界中からそれぞれの木材を取り寄せていますが、ザウターは工場長が答えて下さった通り、ほとんどドイツ国内か周辺の国の物を使用しています。
ピアノメーカーごとに、その国のお国柄が出る理由の一つがここにあるようです。現在は日本のピアノメーカーの響板は多くアラスカのシトカ・スプルースが使われていますが、30年以上前は日本のエゾ松がよく使われ、古くて状態の良い日本製のピアノは日本らしい温かみのある音を聴くことができます。
特に日本製のピアノは古い楽器ほど、修理をして良い音を引き出す価値があるように思います。更に上の表現力のあるピアノを求めたくなった時、ドイツ製のピアノが選択肢に挙がると思います。
最後にドイツの人々について、挨拶や話をするときなど相手の目をしっかり見るのが印象的でした。今回のドイツ滞在ではドイツの良い面ばかりを見た気がします。それぞれの国に良い面や悪い面があり、お互いの違いや文化を認めて理解することは本当に楽しいことです。
この経験をお客様に生の正しい情報として、お伝えできればと思います。
長文お読みいただきありがとうございました。
株式会社ピアノファクトリー 調律技術師 佐野雄一






























